目にとまるかとまらないか

現代では広告や看板はここにもあちらにも、路上にあふれています。閑散とした緑に満ちた森の中にある看板でしたら、すぐに目にとまるでしょう。しかしながら、雑多な色の洪水の街中で、多くの看板の中から惹きつけられる看板とは一体どういったデザインなのでしょうか?奇抜なもの、可愛らしいもの、優れたデザインであれば、目をひくかもしれません。でも、最もその人をひきつける原因となるのは、その人が興味を持っているかどうか、という点が大きいのではないでしょうか。

例えば、最近、歯が痛くて仕方ない、歯医者さんに行かなければなあ、でも忙しいし、どこの歯医者さんがいいかもわからないし・・・といつも潜在的に歯のことについて気にかけている人は、必然的に歯科医の看板が目にとまりやすくなることでしょう。

逆の観点から言えば、歯に全く問題がない人には、歯科医の看板は目にとまりにくいということだと思います。必然があって初めて目に入る、ということです。私たちは毎日、情報社会の中で生きています。そして、必要な情報と不必要な情報を取捨選択して毎日を過ごしています。膨大な量の情報処理をするには脳が疲弊しすぎてしまうのです。ですから、自分に最も必要な情報しか目に入ってこないようになっているのでしょう。そんな中、視点が通過することなく、いかに広告や看板に目にとどまらせることができるか、といったことは、常に広告や看板デザイナーの使命でもあり、やりがいでもあるでしょう。

眼科の看板で目のモチーフのデザインが多いように、歯科の看板で多く見られるのは、歯や歯磨きをモチーフにしたデザインのものです。ありがちなデザインの中で、そこにいかに差別化を図るか、いかに初診の患者さんを増やすことができるか、看板は大きな役割を担っているものと思います。その看板を見て、皆が苦手と感じるあの歯科治療のキィーンという音を思い起こさせないような、清潔感と信頼感を感じられるような、もっと欲を言えば、少しユーモアを感じられるような看板のデザインであれば、そろそろ歯医者さんに行かなきゃな、この歯医者さんは良さそうだし、一度お世話になってみようか、という気になるかもしれません。